2011年 11月 07日
イグザイルする
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秋葉原なんて降りて歩き回ったことなんてなかったから、電気街口からの通りがあんなにシャッターストリートになってるなんて知らなかった。地図をぐるぐる回してもその会場がわからない。客引きのメイドさんと看板だけが明るい午後8時。
狭い暗い隠れ家みたいなその場所でUFOキャッチャーの音と学校の校歌だけが響いてる。生まれてはじめてやるクレーンゲームは操作がよくわからないけど、ぬいぐるみが獲れたら次の会場に行けるっていうんで、しばらく夢中で挑戦する。ときおりガラスに映る自分の顔が、目的をなくして何かに没頭している他人みたいで、どうしたってこの街、アキハバラのことを考えてしまう。
「小学校があるから、風営法で守られているんだって……この土地は」
会社帰りのスーツ姿の男性が、何度目かのトライで次への切符を手に入れている。ゲームセンターはきらいだ。ゲームセンターにくる人間も好きじゃない。1時間近くチャレンジしてもひとつも獲れなかったので大人の武器・お金を使って、次の会場までのチケットを買う。
これはオリエンテーリングだ。
午後9時、舞台はアキハバラ。
小さな地図ではたどり着けない。道を尋ねた金物屋の女主人は、口が聞けないのだろうか、無言で方向を指さすのみだ。これは舞台だと自分に言い聞かす。ロイヤルホストは暗く閉まっていて、決して目印になりはしない。
「加藤」のことを考えた。「加藤」だけじゃない、この街を歩く人──みんな。五感を鋭敏にしておきたくて、耳に突っ込んでいたイヤフォンを抜く。
雑居ビルの上階は周囲の静けさに反して、けばけばしい壁面と鏡に囲まれたサロンのよう。丸テーブルを囲む常連客のような男の人たちと、ソファで打ち合わせしてる女の人たち。キャバクラになりきれないキャバクラ(そう、いろんな理由からCBAFはじめとするキャバ嬢たちがいなかったらしい、残念)。
'ALL ART IS SHIT, ALL SHIT IS ART' 、嘘くんの絵。ここが第二会場。
上の階は真っ暗で、ビニールテントの中は文字通り、抜け殻。震災以降の姿だと一目でわかる、彼らが脱ぎ捨てていった凡庸さと日常の欠片だけが暗闇の中に残っている。なぜ今自分は「凡庸さ」などと思った?──カオス*ラウンジは破滅*ラウンジ、破壊*ラウンジ、再生*ラウンジと見てきたけれど、この場所にはもう、あの人たちはいない。
「東京から逃げる 破滅ラウンジはもうできない 海外へ逃げる アキバをつくる」
殴り書きされた白い文字。
Google Mapを歩き回るゲームの主人公がモニタに映し出されている。
「RPGツクールだな、」
明かりを見つめていたメガネの男の人が誰にいうでもなくつぶやく。誰かが作ったゲームを見つめる私たちも確実に誰かのゲームのコマ。何かが次へ動こうとしていることはよくわかるよ。
「「動物化の時代」以降、いかにしてアートは可能か?と」
帰り道、駅の方角を見失う午後10時。この街の夜はこんなに暗かったんだっけか…。
灯りがともるバーを何げなく覗くと、ソファに沈み込むようにして暗闇の中で談笑している同じような風貌の男の人たちが見えた。ぞっとする。これは悪口じゃない。でもやっぱり「加藤」と震災のことを考えてしまった。
とらのあなの萩原一志原画展を見たかったけど、時間を大幅にオーバー。明るいところに出たらなんとなくほっとしてしまった。フェスティバル/トーキョー・カオス*イグザイル、見た人の他の感想も聞いてみたいな。
狭い暗い隠れ家みたいなその場所でUFOキャッチャーの音と学校の校歌だけが響いてる。生まれてはじめてやるクレーンゲームは操作がよくわからないけど、ぬいぐるみが獲れたら次の会場に行けるっていうんで、しばらく夢中で挑戦する。ときおりガラスに映る自分の顔が、目的をなくして何かに没頭している他人みたいで、どうしたってこの街、アキハバラのことを考えてしまう。
「小学校があるから、風営法で守られているんだって……この土地は」
会社帰りのスーツ姿の男性が、何度目かのトライで次への切符を手に入れている。ゲームセンターはきらいだ。ゲームセンターにくる人間も好きじゃない。1時間近くチャレンジしてもひとつも獲れなかったので大人の武器・お金を使って、次の会場までのチケットを買う。
これはオリエンテーリングだ。
午後9時、舞台はアキハバラ。
小さな地図ではたどり着けない。道を尋ねた金物屋の女主人は、口が聞けないのだろうか、無言で方向を指さすのみだ。これは舞台だと自分に言い聞かす。ロイヤルホストは暗く閉まっていて、決して目印になりはしない。
「加藤」のことを考えた。「加藤」だけじゃない、この街を歩く人──みんな。五感を鋭敏にしておきたくて、耳に突っ込んでいたイヤフォンを抜く。
雑居ビルの上階は周囲の静けさに反して、けばけばしい壁面と鏡に囲まれたサロンのよう。丸テーブルを囲む常連客のような男の人たちと、ソファで打ち合わせしてる女の人たち。キャバクラになりきれないキャバクラ(そう、いろんな理由からCBAFはじめとするキャバ嬢たちがいなかったらしい、残念)。
'ALL ART IS SHIT, ALL SHIT IS ART' 、嘘くんの絵。ここが第二会場。
上の階は真っ暗で、ビニールテントの中は文字通り、抜け殻。震災以降の姿だと一目でわかる、彼らが脱ぎ捨てていった凡庸さと日常の欠片だけが暗闇の中に残っている。なぜ今自分は「凡庸さ」などと思った?──カオス*ラウンジは破滅*ラウンジ、破壊*ラウンジ、再生*ラウンジと見てきたけれど、この場所にはもう、あの人たちはいない。
「東京から逃げる 破滅ラウンジはもうできない 海外へ逃げる アキバをつくる」
殴り書きされた白い文字。
Google Mapを歩き回るゲームの主人公がモニタに映し出されている。
「RPGツクールだな、」
明かりを見つめていたメガネの男の人が誰にいうでもなくつぶやく。誰かが作ったゲームを見つめる私たちも確実に誰かのゲームのコマ。何かが次へ動こうとしていることはよくわかるよ。
「「動物化の時代」以降、いかにしてアートは可能か?と」
帰り道、駅の方角を見失う午後10時。この街の夜はこんなに暗かったんだっけか…。
灯りがともるバーを何げなく覗くと、ソファに沈み込むようにして暗闇の中で談笑している同じような風貌の男の人たちが見えた。ぞっとする。これは悪口じゃない。でもやっぱり「加藤」と震災のことを考えてしまった。
とらのあなの萩原一志原画展を見たかったけど、時間を大幅にオーバー。明るいところに出たらなんとなくほっとしてしまった。フェスティバル/トーキョー・カオス*イグザイル、見た人の他の感想も聞いてみたいな。
by iwafuchimisao
| 2011-11-07 05:43
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