2008年 11月 11日
三島、薔薇紀行
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皆さん、若い頃読んだ三島由紀夫の著作で、
それなりに内容を覚えているものはどれくらいありますでしょうか?
鎌倉文学館と聞いて、「豊饒の海」の第一部、「春の雪」での
別荘のモデルになったと思い浮かぶ方はいらっしゃいますか?
「春の雪」といえば、近年、行定勲監督で映画化もされるほど、
わかりやすいロマンスを装った三島作品ですので、
今から10年近くも前、学生だったわたくしもとりあえず感化されまして、
ぜひともそのモデルとなった邸を拝見したいという想いのみで
鎌倉を訪れたことがありました。
若さとは恐ろしいもので、訪れたその日が文学館の
休館日と知っても諦めきれなかったわたくしは、
入り口を閉ざす鉄柵を無謀にも乗り越え、敷地内に無断で忍び込んで
無人の庭から邸を眺めひとり嘆息するという、鎌倉市と前田侯爵に
土下座もののやんちゃ所業をしでかした覚えがあります
(鎌倉文学館は、旧前田公爵家部邸を鎌倉市が寄贈を受け
活用しているのです)。
この度、その文学館の前庭で、秋薔薇を愛でながらお茶会をするという
雅な催し物があると聞きつけたので、当時の若さを思い出しながら
ほぼ無計画で電車に飛び乗り、久方ぶりに彼の地へと向かいました。
(わたくしの乗り越えた鉄柵)
降らないと予報されていた雨がしとしとと由比ヶ浜を濡らす中、
わたくしも靴下をびちょびちょにさせながらようよう文学館に辿り着き、
お目当てのお茶会の終了時間までは充分余裕があるわ、、、さすが、
湘南新宿ラインって速いのね、本数少ないけど。とほくそ笑みながら、
受付にてもはや慣れっこの、「おとないちまい」コールを致したところ、
なんと、受付の爺やは非情にもこの雨と寒さのため、本日のお茶会は
終了しております、などとぬかすではないですか。
こちとら鎌倉コロッケや薔薇まんじゅうも食べずに高円寺から一直線に
文学館に来てるんですけど雨の中。コンビニで傘買って。
そんな憤怒を口には出せず、でもぶっちゃけその柵乗り越えてやろうかと
思いながらも、薔薇園と邸の中は見れるというので、
400円払って入りました、普通に。大人になったものです。
秋の小雨に濡れる薔薇は、「春の雪」の清顕と聡子のように
とてもいやらしく、晴れた空のもとでは見れない、
エロスに溢れた表情をしておりました。
いいですね。
寒くなるとどうしても街を歩くカップルに膝蹴りをかましたくなって
しまいますが、そんな人達にはぜひ秋薔薇を愛でることで
心に平穏を取り戻して欲しいものです、わたくしのように。
プリンセス・アイコという薔薇はやはり、プリンセス・ドゥ・モナコや
クィーン・オブ・ウェールズなどの品種にくらべると野暮ったい色味でした。
ぜひとも改良を重ねて、心からの笑顔を彷彿とさせる
造形になって欲しいものです。
わたくしの好きな薔薇のひとつに、「初恋」という品種があるのですが、
春にも秋にも咲くのだと気づき、年に2回も初恋とはね、といささか
冷淡な視線になってしまったことを反省いたします。
先週訪れた京成バラ園でも、
満開の薔薇に囲まれ興奮したマダムご一行が、
「あーーーー、あたし、幸せええーー!!!」と絶叫しておりましたが、
薔薇を愛でるというのはやはり若干の非現実プレイが入っており、
女性はお姫様気分になれるのでしょうね。
それにしても川崎以南は、一人行動をするという文化がなかなか
浸透していないようで、立ち寄る喫茶店、商業施設等で
様々迫害を受けました。
さすが神奈川カップルの国。
帰りは横須賀線グリーン席で戻ってきましたが、
それと気づかずグリーン車両に乗り込んでいた外国人一行が
車内改札で団体車両移動させられているのを目撃し、
わたくしもどこか異国の地へ行きたい、とぼんやり思った
薔薇紀行(近隣編)でした。
秋薔薇は11月下旬まで見頃だそうなので、癒やされたい方はぜひ。
鎌倉文学館
京成バラ園
by iwafuchimisao
| 2008-11-11 12:07