2010年 11月 29日
ジントリップ
|
その旅では、夕飯と宿だけを共にする友人が一緒だった。
日中はお互いが気ままにぶらぶらと過ごし、夕飯時になると手頃なカフェで待ち合わせる。私が遠距離列車に乗って海の側の小さな美術館を訪ねたり、お決まりの中央郵便局で切手を物色したりしていた間、友人は市役所の前のパレードを見に行ったり、歴史ある教会を訪れたりしていたようだった。安宿だったので夕飯はだいたい外で、ビールが有名な街らしく鳩がキスしてるラベルのものを好んでよく飲んだりしていた。
コペンハーゲンセントラル駅の近く、歩いていける距離のところにレンタルサイクル屋があったので、旅の最終日前日、私はそこで一台自転車を借りることにした。ヨーロッパのものほとんどがそうであるように、その自転車もブレーキレバーがなく、ペダルを逆回転させることで止める仕組みのものだった。慣れない上に自転車の規格も大きく、結局私は飛び降りて止めるワザを信号の都度駆使することになる。
読めない言葉で書かれた地図を頼りに訪れたのは、Assistens Kirkegård、公園のように広い墓地。こういったところで私は正門から入れた試しがない。必ず迷う。結局このときも、ぐるりと塀を廻って通用口のようなところから入った。知らない街の墓地を訪れるのは初めてではないけれど、異邦者という言葉がこれほど似合う場所もない。とはいえデンマーク語やスウェーデン語の発音は英語というより日本語のそれに近いところもあり、遠い国なのに「英語がしゃべれない人種」としての一体感のようなものも感じる。園内をのんびりとあてどなく歩く。
散歩する老人がいた。セロファンに包まれたオレンジ色の花が添えられていた。曇天だった。カメラはスメナ8M、露光も距離もぐちゃぐちゃだった。
アンデルセンの墓は見つけられなかった。
------------------------------------
どうして今こんなことを思い出しているかというと、この間手に入れたzine、
「ヒバリ画報 vol.1 プロヴィデンス探訪~ラヴクラフトの影を追って~(宇波拓)」が素晴らしかったからなのです。恵比寿の工事中の道路、信号待ってる間に読んだけど、ふわっとトリップしたね。
「2007年4月、アメリカ演奏旅行の途中に訪れた米ロードアイランド州プロヴィデンスで歩いて回ったH・P・ラヴクラフトゆかりの地を、写真と文章で振り返る。(内容紹介より)」
知らない人の旅なのに、なぜか自分も同行している気分になるのは、なぜだろう。紙ナプキンの裏にメモを取りながら歩いた自分のように、全て手書きで綴られている回想録だからだろうか。こうやって、誰に見せるともなく取った写真や、10年たっても忘れられないあの日の天気なんかが、遠い時間を超えてまた誰かの空想旅行になったりするのかな。
同じく「ヒバリ画報 vol.2 そば・うどん(江崎將史)」は主に立ち食いそばの麺写真を淡々と並べた一冊だけど、これも半端ないトリップ感です。西の方へ向かう列車の停車駅の、つゆの匂いが確かにしたもの。
手に入る内に買っておいた方がよいんでない。
Lilmagより
HOSE
日中はお互いが気ままにぶらぶらと過ごし、夕飯時になると手頃なカフェで待ち合わせる。私が遠距離列車に乗って海の側の小さな美術館を訪ねたり、お決まりの中央郵便局で切手を物色したりしていた間、友人は市役所の前のパレードを見に行ったり、歴史ある教会を訪れたりしていたようだった。安宿だったので夕飯はだいたい外で、ビールが有名な街らしく鳩がキスしてるラベルのものを好んでよく飲んだりしていた。
コペンハーゲンセントラル駅の近く、歩いていける距離のところにレンタルサイクル屋があったので、旅の最終日前日、私はそこで一台自転車を借りることにした。ヨーロッパのものほとんどがそうであるように、その自転車もブレーキレバーがなく、ペダルを逆回転させることで止める仕組みのものだった。慣れない上に自転車の規格も大きく、結局私は飛び降りて止めるワザを信号の都度駆使することになる。
読めない言葉で書かれた地図を頼りに訪れたのは、Assistens Kirkegård、公園のように広い墓地。こういったところで私は正門から入れた試しがない。必ず迷う。結局このときも、ぐるりと塀を廻って通用口のようなところから入った。知らない街の墓地を訪れるのは初めてではないけれど、異邦者という言葉がこれほど似合う場所もない。とはいえデンマーク語やスウェーデン語の発音は英語というより日本語のそれに近いところもあり、遠い国なのに「英語がしゃべれない人種」としての一体感のようなものも感じる。園内をのんびりとあてどなく歩く。
散歩する老人がいた。セロファンに包まれたオレンジ色の花が添えられていた。曇天だった。カメラはスメナ8M、露光も距離もぐちゃぐちゃだった。
アンデルセンの墓は見つけられなかった。
------------------------------------
どうして今こんなことを思い出しているかというと、この間手に入れたzine、
「ヒバリ画報 vol.1 プロヴィデンス探訪~ラヴクラフトの影を追って~(宇波拓)」が素晴らしかったからなのです。恵比寿の工事中の道路、信号待ってる間に読んだけど、ふわっとトリップしたね。
「2007年4月、アメリカ演奏旅行の途中に訪れた米ロードアイランド州プロヴィデンスで歩いて回ったH・P・ラヴクラフトゆかりの地を、写真と文章で振り返る。(内容紹介より)」
知らない人の旅なのに、なぜか自分も同行している気分になるのは、なぜだろう。紙ナプキンの裏にメモを取りながら歩いた自分のように、全て手書きで綴られている回想録だからだろうか。こうやって、誰に見せるともなく取った写真や、10年たっても忘れられないあの日の天気なんかが、遠い時間を超えてまた誰かの空想旅行になったりするのかな。
同じく「ヒバリ画報 vol.2 そば・うどん(江崎將史)」は主に立ち食いそばの麺写真を淡々と並べた一冊だけど、これも半端ないトリップ感です。西の方へ向かう列車の停車駅の、つゆの匂いが確かにしたもの。
手に入る内に買っておいた方がよいんでない。
Lilmagより
HOSE
by iwafuchimisao
| 2010-11-29 07:01
| BLOG